野球をはじめたのは兄の影響
特にご両親が野球好きというわけでもありませんでしたが、小学校1年生のときに3歳上のお兄さんが通っていた少年野球チーム「中之町イーグルス」に遊びにいったのがきっかけ。1年生なので小さくて何もできなかったけれど、ボールを追いかけるのがとにかく楽しかったとのこと。
その頃は、チームがとても強くて年間でもほとんど負けなかったそうです。
地元の中学校・軟式野球部を経て、総合技術高等学校・硬式野球部に入部。
「初めての硬式野球でしたが、もともとキャッチボールなどは硬式球でしていたので違和感なく馴染めました。
硬式野球部が出来て2年目だったので1学年上の先輩しかおらず、監督も若くて選手の自主性を重んじてくれる方だったので、和気あいあいと伸び伸び野球ができました。小学校からずっとでしたが、なかでもこの頃は特に野球をするのが楽しくて仕方なかったです。」
忘れられない試合
今までに一番印象に残っている試合を聞くと、迷いなく「高校2年生のときの広島県大会決勝戦」と答えてくれました。
相手は広島で一番の強豪校・広陵高校。前年の決勝戦も同じ相手に負けていたので、雪辱を果たすためにみんな気合いが入っていたそうです。
「5回までに7点差をつけていたので、“勝てる”という思いがありました。
でも、その思いとは裏腹にミスが重なってしまい7点取られて同点に追いつかれたんです。結局、10-12で敗れました。」
悔し泣きしているチームメイトの横で、副キャプテンだった東選手はなぜか涙が出ませんでした。
「自分たちが相手の立場だったら、絶対に勝てなかったと思います」
悔しさよりも、7点差でも諦めずに食らいついてきた相手の凄さを感じて呆然としたそうです。
しばらくしてから徐々に悔しさがこみあげてきたのだとか。
その時の相手は、今では仲良し。
広島東洋カープ2008年ドラフト2位入団・中田廉投手がエース、2012年ドラフト3位入団・上本崇司選手がチームを引っ張っていたというのでレベルの高さが伺えます。
苦しかった寮生活
コマスポ 山田遼太郎撮影
その後、名門・駒澤大学野球部に入部した東選手。
今まで楽しいだけで続けてきた野球が、野球部寮に入って一変。
「細かい規則が多くて、特に1年生は“先輩とすれ違う際は必ず止まって頭を下げて挨拶をする”とか、“寮の玄関を出たら歩いてはいけない(グラウンドまで走る)”とか。練習が終わった後、先輩のユニホーム洗濯だけで2時間はかかりますし、ボールの手入れなどしているとあっという間に就寝時間になってしまいました。部屋も4年生と1年生が同部屋なので、いろいろと厳しく指導されました」
しかし、その辛い経験も自分が上級生になるにつれて、必要だったと思うようになったといいます。
「もしあの経験をせずに上級生になっていたら後輩たちに指導もできないし、駒澤の伝統も崩れてしまう」
東選手の礼儀正しい対応をみると、寮での厳しい生活を通して上級生へのステップを経ると同時に、社会人としてのマナーや立ち振る舞いも自然と身に付いているような気がしました。
最後のリーグ戦を終えると4年生は1週間以内に退寮します。
4年間の思い出が詰まった寮を去る寂しさもありましたが、それ以上に寮生活の苦しいイメージから解放される嬉しさがこみあげてきたのだとか。
先輩に励まされた4年間
大学入学当時は遠投も105メートルを記録し、順調な滑り出しでした。
しかし1年生の冬にひじを痛め、診察の結果は「剥離骨折」。手術もできずボールさえ投げられない辛い毎日を送り、退部を決意。
「厳しい先輩方から『まだ先は長いから、もう少し頑張ってみろ』と言葉をかけてもらって思いとどまりました」
ひじの痛みは完全には取れることはありませんでしたが、徐々に投げられるようになり2年生以降公式戦でも捕手として活躍しました。
笑って気分転換
行き詰ったり落ち込んだりしたときは、なるべく野球のことを考えない時間をつくります。
「お笑いのDVDを見て笑ってすっきりしたあとに、YouTubeでプロ野球などのレベルの高い映像を見るようにしているのですが、そうすると自然と気持ちのスイッチを切り替えられるのか、モチベーションが高まってきます。」とのこと。
プロ野球で尊敬する選手は中日ドラゴンズの谷繁選手。
「キャッチャーとしての配球や送球技術も超一流ですが、チームメイトや相手チームの選手からも信頼され尊敬を集める姿によりあこがれる」のだとか。野球の技術うんぬん以前に、人としてどうあるかを大切にする東選手らしい意見でした。
よく食べて、よく寝て、よく運動して
「昔から好き嫌いなく良く食べました。
大学時代は特に練習量・食事量が増えたので、大学入学当時70kgだったのが今では80kgに。
好き嫌いは全くありません。
カルシウムグミは、常に部屋に置いておいて、お菓子感覚でポリポリ食べています。
小学生のころは朝早く勝手に目覚めることがよくあって、睡眠はそんなに深くないかと思っていたのですが、
高校大学くらいになると、良く眠れていたようで逆に朝起きられないくらいになりました(笑)。
運動は小学校の頃から大好きで得意でしたが、唯一長距離は苦手です。
大学のトレーニングで長距離を何本も走るメニューがあるのですが、決められたタイム以内で走らなければ本数に入れてもらえないので、遅いながらもなんとか頑張っていつもタイムぎりぎりでクリアしています。」
(4~5人チームで走り、1人でもタイムを守れないとチームの責任になるそうで、遅い人は引っ張ってもらったり、押してもらったりして走るのだとか。笑)
日本一を争う強豪校の厳しいスケジュール
日本一を何度も経験している伝統校だけに、練習は相当厳しいようです。
「学校があるときは、オフはなし。学校が休みに入ると、週に1回オフの日がありますが、1日休むと次の日の練習がきつくなるので、オフでも自主練習することが多いです。
午前中は8:30~12:00が守備中心の練習。13:00~17:00が打撃中心の練習。
1年生は、練習終わったあとは先輩のユニホーム洗濯でだいたい2時間はかかり、ボールの手入れなどをしているとあっという間に一日が終わってしまいます。
上級生になると自由に時間が使えるので、ウェイトをしたり外にでかけたりしますが、門限の22:30までには帰ってきて、だいたい24:00に就寝します。」
夜になるとお腹が空くので、コンビニに行っておにぎりやおでんを買って食べるのが楽しみなんだとか。日本一を争う強豪校は練習量も一流です。
社会人で全国大会へ
実は、東選手の輝かしい経歴の中でも、全国大会への出場はまだありません。
「本当は高校で野球を辞めて就職しようと思っていたのですが、縁あって駒澤大学で野球をすることができてここまで来れました。
肘のケガは完全には治っていませんが、せっかくなので社会人で野球を続けて、初めての全国大会へ行きたいです。」
同期の半分は野球から離れてしまうそうですが、東選手は野球を続ける選択をしました。
目標は、大好きな野球を“少しでも長く”やること。
のっぽくんメッセージ
2013年4月から愛知県の企業に就職し、社会人生活が始まります。全国大会に出場し、活躍する東選手の姿を心から期待しています!
頑張れ東選手!